風のつよい日

風の強い日にお風呂に入るのが好きだ。
子供のころ、母と一緒にお風呂に入った懐かしい思い出。
窓を開けると目の前に庭のぶどう棚が見えた。
そしてその向こうにお月様・・。
母は必ず「あの月はこれから大きくなるの?小さくなるの?」と私に聞く。
理科の勉強をお風呂の中で・・。
「左が欠けているのが、これから大きくなる月だよ」と教える。

風の強い日は窓を開けられない。
そんなときは国語の勉強。
ハエが飛んできて風呂場の隅にとまる。
両手をスリスリ・・・。
「やれ打つな」と母。
私に下の句を教えようとする。
「ハエが手をする、足をする・・・」


湯船の中で耳をすましていろんな音を聞く。
ゴロゴロ・・・とポリバケツの転がる音。
家路を急ぐ人の足音。
「プ〜〜〜ハ〜〜〜」お豆腐屋さんのラッパの音。
母は「こんな風の強い日でも外で働いている人もいるんだよ」と言う。
何だかこうして母とお風呂に入っていることが、
最高に幸せなことだと思えてくる。

風のつよい日にお風呂に入ると、不思議とその頃のことを思い出す。
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