***ねこちん第11話  誕生日のプレゼント***
***平成16年のお話***

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第二部

お昼過ぎ、夫からメールが入った。
「誕生日おめでとう。
プレゼントがあるので帰り時間は少し遅くなりますが、楽しみに待ってるように」

??なんだろう??
いままでそんな風にプレゼントはもらったことがない。
忘れていたことはないけど、現実的・・というのか「何にする?」と聞いてくるような人だった。
「まあ、いいや、何でも・・・楽しみにしていよう」

まさかそんなものがやってくるとは思わないから、
いつもの夜と変わらない時間を過ごし夫の帰宅を待っていた。
11時近くになって、ようやく自宅前にタクシーが停まった。
ちょうど2階の窓からその様子を見ていた私は、大事そうに夫が何やら抱えている姿を見て
「随分大きなケーキ買ってきたなぁ。。」と思えた。

玄関を入ってきた夫の手には布のキャリーバッグ。
もうネットのところから「その子」は顔を出していた。
「ねこ?」
「とりあえず、話はあとでするから、お尻洗ってやってくれよ」
「なに、どうしたのよ」
バッグを開けると「う、臭いねぇ」
そう、その子はどうやらバッグの中で下痢ピーうんちをしていた。
そしてなすりつけてしまったんだろう、下半身はうんぴーだらけになっている。
バッグの中もかなりの汚れ様・・。
私は訳がわからないままその子を洗面所へ連れて行ってお湯でお尻を洗う。
「あれまぁ、足も尻尾もウンピーだらけだよ、可哀想に」
「遠かったからなぁ。。ごめんなぁ。ごめんなぁ・・」と夫は謝っていた。
改めて顔をよく見てみる。
?・・・あれ、この子・・・コロちゃん・・?んな訳ないよなぁ。
ドライヤーで乾かしながら夫の話を聞く。
聞けば聞くほど何がなにやら・・パニック状態だ。
メールもネットも苦手な夫がどうやって、どうなって、コロちゃんがここにいるんだろう。
その事情を理解するのにかなり時間を要した。
”たしかにKimさんのHPへ行って、何度も子猫ちゃんの写真を見たよ
可愛いから夫にも見せたし・・。
そりゃあ、今まで一度も血統書つきの猫なんて飼ったことはないし、
ま、一度はアメショーとかスコちゃんとか飼いたいとは思ったよ・・。
だけどさ、突然誕生日、ぷ、プレゼントって!!
ケーキを一つ頼んできたとか・・って話とは違うでしょ?
生き物なんだからさ。
一言相談ってものがあってもさぁ・・
だいたい我が家は仲のよくない2にゃんがいるんだよ
どうすんだよぉ”
と正直私はそう心で叫んだ。
それでもなぜか黙々と二人はケージを組み立てた。
ケージに入れてあげると
コロちゃんは一生懸命濡れたお尻付近をナメナメして、
ふわんふわんのべっぴんさんになった。
我が家の4にゃんが遊ぶボールを転がして勝手に遊んでいる。
何の準備もしてないから慌てて器を探し、適当なお皿を二つ用意する。
それに頂いてきたというカリカリを入れると、バクバクと食べだした。
「あれまぁ、すごい食欲だわぁ。。」
お水もよく飲んで、さっそくトイレへ・・。かなりの大物だ。
そして、疲れたのかコテっと寝てしまった。(おい・・)

それから夫といろんなことを話す。
獣医さんに相談したこと、いままでKimさんと内密に話を進めていたこと、
名前を「さくら」とつけたこと・・・。
よくやくすべてが飲み込めたとき、すでに深夜になっていた。
それからKimさんがさぞ心配しているだろう・・と思い、メールを書く。
コロちゃんが無事に到着したことだけでも知らせなくては。
夜中に何度か目が覚めてコロちゃんのいるケージを覗く。
気持ちよさそうに眠っている。
かりかり・・と音をさせてごはんを食べているときもある。
ぺちゃぺちゃ・・と水を飲む音。
両足をう〜〜んと伸ばして、すっかりリラックスしていて
何度見てもたいした子猫ちゃんだ。(^^)

朝早くから目が覚めてしまった。
なんだかろくに寝てないような気がするが、まあ仕方ないか。
Kimさんに電話をして、いろいろお話をした。
Kimさん家族が大事に大事に育ててきたことは
HPの上でも理解していたし、
今どんな気持ちでいるのか・・ということも手にとるようにわかった。
「大事にするからね」
「HPでもいっぱい写真を載せるしね・・」
Kimさんは「先住猫さんを可愛がってあげてください」と言ってくれた。
「まだ、コロちゃんは何もわからないから・・」
うん、ほんとにそうだね。ありがとう。
猫を本当に愛するKimさんのやさしい気持ちが伝わってきた。
さっそくなつ、ふー、ちはるが偵察にきた。
恐る恐るケージに近づいてみる。
さくらは遊んでもらえるのかと思い興味津々・・・
「ハァー!!」威嚇の嵐。
それでも平気であくびをしたり寝転がったりしてお腹をみせている。
大丈夫、きっとうまくいくよね。

嵐のような誕生日だった。
願うのは「みんな元気で仲良く」ということだけ・・・。