***ねこちん第3話  新しい猫***
***平成6年のお話***

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ある日、近所に住む主婦の方から電話がきた。かなり怒っている様子。
「○○さんがね、子供と一緒に黒いビニールのごみ袋に入れたものを林へ投げていったのよ!」
「ごみを林に投げ捨てた・・・ってことなの?」「違うのよ!中がガサゴソ動くから見たら、猫が入ってるのよ!!」
話に出てきた○○さんと私たち夫婦が親しくしているということと、私たちが猫好きだったこともあって、
我が家に電話をしたらしい。
よくよく事情を聞いたら、その猫を今預かっているが、
ご主人が猫嫌いのためこれ以上はこの方の家には置いておけない・・・とのことだった。
電話ではらちが明かないと思い、とにかく訪問してみた。
ノラクロのような顔をした猫を抱えて奥さんが出てきた。
まだ小さくて可愛らしい。
これなら誰かもらってくれる人もいると思い預かることにした。
夫が手を出そうとしたら「フゥー」と威嚇。
警戒心の強い猫。
「たぶんひどい目にあったからでしょう・・・」と奥さんは言った。
そういえば数日前、マンションの子供たちが寄ってたかって
いじくりまわしていた猫かもしれない。
小さい時は何でも可愛らしい。特に子供たちは仔猫が好きだ。
でもその猫にもやがては盛りがきたり、 病気になったり、
まして死んでしまうなどという事など考えもしない。
子供が拾ってきてしまった猫が二度と帰ってこないように、
きっと捨てに行ったのだろう。
我が家に連れて帰ったものの何の準備もしていない。
一番驚いたのはなっちゃん・・・「な、なにもの??」って顔でおびえてしまっている。
ちょうど家を新築するために借家住まいをしていた。
早くにマンションが売れてしまったので新居が完成するまでの1年間を借家で過ごした。広い家だった。
7部屋プラス10畳の台所・・・その中の一部屋にこの「ノラクロちゃん」を監禁状態にした。
急いでトイレや食事のお皿などを買ってきた。
部屋に入れるのは私だけで、夫が入ると威嚇を繰り返した。
それにしても食べ方が異常!野良独特の「ガツガツ食い」
それにどこに入ってしまうの??という位食べる・・・
食べるから当然、出るものも出る。
驚いたことに「ウ●チ」は真っ赤。
その「ウ●チ」にらせん状になにか白いものが巻きついていた・・・
「何?これ」よく見るとそれは動いている・・・
「ぎぇ〜〜!」気絶寸前!!
「これって、あの、回虫とかいうの??」
夫は部屋には入れないので、
誰もいない部屋で(正確には私とノラクロちゃん)自問自答。
「ど、どうしたらいいのかなぁ」・・・「まずこれを始末しよう」
なんて独り言を言いながら
「ウ●チ」を片付け、翌日さっそく病院へ連れて行く。
動物病院で回虫の薬をもらい先生に聞いてみた
「あの、回虫ってどれくらいで治りますか?
この猫、うちの猫じゃないんです。
元気になったら誰かにあげようと思ってるんですけど」と。
先生はちょっと冷たく「3ヶ月は様子を見てください。
それで回虫がいなければ大丈夫です」「・・・・・」
すでに生後3ヶ月にはなる猫・・・
これから3ヶ月もしたらかなり大きくなってしまう。
それからもらってくれる人なんているんだろうか?

あんなに食べるのにノラクロちゃんは、痩せている。
ガリガリで背骨が突き出しているほど。
食べたものはあの回虫にいってしまうのか・・・

夫に「ねぇ、この猫うちの子にしようか」と言った。
夫は困ったような顔をしたが答えは出ている。
回虫がいる猫を人にあげられない・・・。
いつまでも名無しのノラクロちゃんではかわいそうなので、
名前をつけることにした。

マザコンの息子、そうあのドラマを思い出して「ふゆひこ」くんにした。