***ねこちん第5話  猫の嫁入り***
***平成10年のお話***

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それは、夏の暑い日だった・・・。
外出先から戻り玄関まで来たとき、どこからか弱弱しい仔猫の声が聞こえた。
キョロキョロと見回すがどこにもそれらしいものは見当たらない。
庭をぐるっと周って車庫に行ってみると、声は少し近くに聞こえた。
クーラーの室外機の隣に小さい段ボール箱が見えた。
近づいてみたが何故か勇気が出ない。「人間の赤ちゃん??」という感じもした。
しばらく箱の前に立っていたら、中の物が「ゴソッ」と動く音がした。勇気を出して開けてみた。
中にはキティちゃんのぬいぐるみ、バスタオル、
そして猫用砂が入れ物に入れられて敷かれていた。
その砂の上にとっても小さな三毛猫がいた。
箱のまますぐ家へ運んだ。とにかく暑い・・・このままでは死んでしまう。
クーラーの部屋へ連れて行き、箱から出してみた。
思っていたより元気で、すぐに我が家の偵察を始めた。
箱の中から一緒に入っていたキティちゃんやバスタオルなどを出してみた。
すべて綺麗に洗濯されている。猫もとっても綺麗。
すべてのものを出しおわって・・・「?」箱の底に茶封筒を見つけた。
手紙か・・・と思って開けてみると、そこには驚いたことに
¥15000の現金が入っていた! 「うそっ!」
その日夫の携帯メールに「我が家はじまって以来の珍事件。
なるべく早く帰ってきてください」と送った・・・。
とにかく隔離しないと先住猫に何かされては大変・・・と、
ふゆひこの時に使ったケージをクローゼットから引っ張り出してきた。

急いで組み立てていく。
ガチャン、ガチャン音がするたびにみんな興奮していく。
なつもふゆひこも、そして私も。
もしかしたら、また、もしかするかもしれない・・・という期待と不安・・・。
珍事件とメールをもらい何事か・・・と思い、急いで帰宅した夫は
帰ってくるなりケージを見つけて愕然としていた。
「また、また猫飼うの?」とちょっと怒っている。
夫に封筒を渡して事情を話す。
きっと近所の、それも私たちが猫好きだと知っている人が置いていったんだろう。
どうしても飼えなくなって、あそこなら・・・と思ったんじゃないだろうか。
猫をあげる時(それが血統書つきなら別だが)女の子だと避妊手術代を出す・・・
という話は聞いたことがある。
このお金は、そういう意味なんだろうか。

和猫のそれも雑種だと1年に4回も仔猫を産む。
1回に5匹6匹も・・・。
野良猫や捨て猫を増やさないためにも
避妊・去勢はぜったい必要だと私は思っている。
茶封筒のお金を見たとき、
「この人はある程度の猫の知識のある人だな」と思った。
きっとどうしても飼えない事情が出来たのだろう・・・
やり方はちょっと乱暴だが、キティちゃんといい洗濯されたタオルといい
「精一杯可愛がられていた」というのは理解できた。
夫は一言「そうか・・・持参金つきで嫁入りしてきたのか・・・?」
といってちっちゃい三毛ちゃんを抱っこした。


名前はすぐに決まった。ちっちゃくって可愛らしい「ちーちゃん」と呼べる名前。

せっかく「夏」「冬」・・ときたんだから今度は「春」にしようよ!


じゃ、「ちはる」ちゃんだね!