さくら

中学3年の冬。
私は行きたかった公立の高校に落ちた。
今でもその日のことをよく覚えている。

皆で合格発表を見に行った。
そして一人だけ、私一人だけ、
番号がみつからなかった。
何度探しても、なかった。
間違いかもしれない、
きっと、家に帰ったら「あれは間違いでした、合格してました」と
電話がくるんだ・・と思おうとした。

公衆電話は行列ができていて、
みんな家族に合格の電話を入れていた。
校門のところに
「制服はぜひ当店で」
というちらし配りのおばさんが立っていて、
その横を通りすぎるのがすごくいやだった・・。

一緒に発表を見に行った友達も気まずそうに、無言だった。
もしかしたら、いろいろ言ってくれてたのかもしれない、
でも私には聞こえなかった。




家に戻って母に話したら、
「じゃぁ、すぐに私立の入学手続きに行こうか・・」と
明るく言ってくれた。
私立の高校へ向かう電車の中で、母は私に言った。
「落ちて、つらい人の気持ちがわかるだろう」
「貴重な経験をしたんだよ」

そういう人になりなさい・・・そんな風に聞こえた。
電車の中、母の隣で泣いた。
そういう人になろう・・と漠然と思った。

落ちるもよし。受かるもよし。
人生に無駄なことは何ひとつない・・。
懐かしく思える日がきっとくる。
みんなの桜、咲いただろうか。
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