食べ物の神様

私には5つ違いの兄がいる。
子供のころの”5歳”というのは大きくて、
学校に上がってから、あまりいっしょに遊んだという記憶はない。
それでも、その記憶の更に奥〜の方に、
キラキラと輝くような兄妹の思い出が実はある。

雨が降ると外で遊べないから、室内で兄妹はよく「はねつき」をした。
広い家じゃないから、すぐにどこかへ飛んでいって見えなくなる。
鴨居に入ったり、タンスの上に乗っかったり。
ポ〜〜〜ンと勢いよく兄が飛ばした羽根は
私の机から天井にまで伸びた本棚の一番高いところへ飛んでいった。
机によいしょ・・と乗っかり私は思いっきり手を伸ばす。
「あった〜」
羽根の隣に不思議な手紙とカビのはえたパンを見つけた。

この頃食が細くて、よく食べ残した私は、
食べきれなかったパンを、
母にしかられないように本棚の一番上に隠しておいて
忘れてしまったんだろう。

手紙にはこうあった。
「たべものを、だいじにしないといけません。たべもののかみさまより」
全部ひらがなで書かれたその手紙を見て、
子供だった私は
本当に食べ物の神様がそういったんだろう・・・と
恥ずかしく、ちょっと怖くなった。

大人になるにつれ、それが兄の字だったということを理解するようになった。
あれから40年以上たち、すっかりおじさんとおばさんになった兄妹。

それでも「ちょっと残そうかなぁ。。」と思ったとき、
食べ物の神様の手紙を思い出す。
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