ぼっとんトイレ事件


1994年(平成6年)冬

新居を建築中のため、近くの一軒家を借りていた。

かなり古い家で、トイレは引き戸で、
しかも「ボットン」汲み取り式(和式)だった。

その時飼っていた猫は「なつ」という三毛猫。
とても器用で、引き戸をいとも簡単に開けてしまう。
少しくらい重たい戸も全身を横に倒して、
足まで駆使して開ける。





私がトイレに入っていると、引き戸を開けて入ってくる!
もし私のいない時に開けて、
ぼっとんトイレに落ちたら?!と考えた私は、
引き戸の外側に簡単な鍵を付けた。
L字型の太い針金を丸い穴にひっかける
本当に簡単なタイプだった。





トイレから出たら、きちんとその鍵を掛ける、
それでなつを守れると思っていた。

2月のすごく寒い日、私は友人との約束があり、
急いで着替えをしていた。
着ていた服を脱ぎ、下着状態の時、何故か・・・
「先にトイレを済ませよう」と思い立った。
そして、急いでそのままトイレへ入った。


「バタン!」と急いで閉めたドア!
その時、「カチャリ」と嫌な音がした。


「??」
「もしかして?!」

なんと、引き戸を勢いよく閉めたため、
外の鍵がかかってしまったのだ!

「うぉ〜〜〜!!」


引き戸ごと、もち上げてみたりしたが、鍵は開かない。
あまりバタバタしているので、
なつがそこまでやってきているらしく、
にゃ〜にゃ〜と鳴いている。
”猫の手も借りたい”とか言うが
こういう時はやはり「器用ななつでも無理か〜〜ぁ」


困ったぞ、これは。
色々考えてはみるがいい考えは浮かばず、
そうしてるうちに、体がどんどん冷たくなってきた。

2月の寒さ、その上、汲み取りトイレの下から
冷たい風が拭きあがってきている。
そして、自分はほぼ裸のような状態。


窓を開ける。
冷たい風が吹き込んでくるのはわかっていたが、
誰か、外を歩いているかもしれない。

恐る恐る顔を出す。
「さ、さ、寒い〜〜〜」


しばらく待ってみるが、
そんなことをしてるうちに凍死しそうだ。




窓を閉め、落ち着こうと目を閉じて、
じっと外の音を聞いてみると、
外を誰かが通れば聞こえるのではないかと思えてきた。

しかし、そう都合よくはいかない・・・。
だいたい、ここは大通りではなく、
近所の家の人しか通らないような道。
こんな寒い日にふらふら歩いてる訳もない・・・。




どのくらい待ったか・・・
もう寒い・・・というより痛い・・・と感じる。
そのうち、それもわからなくなってきた・・・。




人の話声が聞こえた。幻聴か?
いや、現実だ。女性が二人で話しながら、
歩いて来るらしかった。
「今だ、今しかない」

窓を開けると、思い切り声をあげる

「すいませ〜〜ん!助けてくださーい」

「こっちです!こっち!」

手を出して、
もう恥ずかしいとかそういうことはその際、なくなって
必死に手を振って叫んだ。



トイレの窓から通りまではかなりの距離があって、
万が一声が聞こえても、
私を見つけてくれるかどうか、わからなかった。


でも、二人連れだったことが功を奏したのか、
二人でキョロキョロと辺りを見回し、
ちゃんと私を見つけてくれた。

事情を話すと
すぐに大家さんに連絡を取ってくれた。

大家さんが家に入って来た時、ほっとすると同時に、
急に我に返った!
自分の格好だ!こんな姿で救出されるのは恥ずかしい。
しかし!!

考える間もなく、
大家さんはまっすぐトイレに向かって進んできて、
簡単に鍵をはずし、ガラリ!
と開けられてしまった!!



いやいや、大家さんにしたら、
「助けなくちゃ」と必死だったに違いない。
ほんと、ありがとうございました。




その後、友人にこの話をしたら
「和式用トイレカバーってのがあるよ」と教えてもらった。
知らなかったぁ〜〜〜。

こんなやつです↓



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