八丁堀事件2



翌日、いつものように出社。


いつも一番早く出社していた私は、
鍵を開けようとして・・・??
「あら、開いてるわ」
しかし事務所内には誰もいない。
社長が早く来て、
コーヒーを買いに行ったりすることもあるので、
きっとそうだろうと思っていた。


しかし、何か様子がおかしい。
デスクの上は散らかり、引き出しも開いたまま。
窓際に近づくと、床に通帳や書類などが散乱していた。


しかし、それでも私は何が起きたのかを理解できず、
ご丁寧にすべてのものを片づけてしまった。


そこに社長、部長、課長、事務の女性・・・
皆が順々に出社してきた。
みんな今初めて出社したということがわかり、
「え?あの・・・鍵開いてました。
それから、そこいらに物が散乱していて・・・」


部長が「俺の机の上の100円玉がないなぁ」
たばこを買うために100円玉を並べて置いといたらしい。

ここで初めて、大変なことに気付く。



「泥棒に入られたんだ!」

「すぐ、警察に連絡して!」


「片づけたものを元通りにしといた方がいいな」と社長。

事務の女性がすぐ目の前の交番に行っている間、
私は元のように散らかす作業。



やってきたおまわりさんに最初に聞かれたのは
「最後に帰ったのは誰ですか?」と
「今日最初に来たのは誰ですか?」


「それは・・・どちらも私です。」
しかも、散乱していたものをご丁寧に
指紋ベタベタつけて触っている。

両手の全指の指紋を採取され、
住所とか帰宅出社時間等を詳しく聞かれ、
調書を取られる。



(実際の写真ではありません)

「盗まれたものをお聞きしたいんですが」

「机の上にあった100円玉10枚くらいかなぁ」と部長。
金庫は被害にあってないようで、
事務所のドアの鍵も壊されてない。
ドアの鍵が壊されてないって、どういうことだろう・・・?
なんだか嫌な雰囲気だな。
ここで安っぽい刑事ドラマなら
「内部の犯行っすかね」となるのか。



その時、課長が大きな声をあげた。


「ワイン!そこに置いてあったワインがないよ」


「あぁ・・・ほんとだ。あれをやられたか・・・」
悔しそうな社長。

「あ・・いや、そ、それは夕べ間違えて私が・・・」
ここで言うべきなのか。
そうだ、言わなくちゃ・・
言いなさいよ・・・
ほら!言いなさいってば!(と心の声)
しかし
なぜか・・・言葉が出ない・・・
そうしてるうちに

「え〜〜と、ワイン2本セットね・・・」と
調書に書き込むおまわりさん。

「まぁ、被害が少なくてよかったですね。
捕まりましたらご連絡します」
と言っておまわりさんは帰って行った。


結局、ワインは返すことが出来なくなり、
その後二人で頂くこととなった。
しかし2000円くらいのワインしか飲んだことのない私達には、
高級ワインの味はわからず。




手に入ったいきさつもあって、
後味の悪いワインとなってしまった。


数年後、犯人が捕まった。
床の清掃業者だったそうで、
管理人が鍵を渡してたから、合鍵を作ったとか。
盗んだものを聞かれた犯人が


「俺はワインなんか盗んでない!」

と言ったかどうか・・。
その辺りは定かでない。
犯人さん、ごめんなさい。


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