1973年(昭和48年)の夏。
私は友人と平和島プールにいた。
当時私たちが夢中になっていたのは、
「アイドルの追っかけ」
中3トリオや新御三家が全盛の頃で、
歌番組は公開放送が多かった。
渋谷公会堂やNHKホールなどにも行ったが、
夏になるとこの平和島プールで行われる公開番組を
よく見に行っていた。

現在はどうなっているかわからないが、
当時の平和島プールはすごく広くて、
小さい子供が遊べる水深の浅いもの〜150p位あるものまで
プールもいくつかあった・・・と記憶している
布製のボートや浮き輪などの貸し出しもしていた
その日は、「ロッテ歌のアルバム」という番組の公開放送だった。
私たちはプールの中で、ボートの上にぷかぷか浮きながら、
プールサイドで歌うアイドルたちを見ていた。
そこに登場したのが、西城秀樹だった!!
ものすごい黄色い声援と共に、まわりの状況が一気に変わった。
登場した秀樹の近くに私たちのボートがあったことで、
女の子たちが一気にこちらに向かって押し寄せてきた!
すごい波と人で、ボートがひっくり返った!
「あぁ!」という間に、私はボートの下に沈んだ。
私の上には今まで乗っていたボートがあり、
その周りを人がぎゅうぎゅう詰めで立っている。
つまり、私は水面に出ることが出来なくなってしまったのだ。
「♪君が望むなら〜〜」
と秀樹の声
すると、プールから
「ヒデキ!」
という女の子たちの合いの手。
曲が始まると、女の子の熱狂はヒートアップ。
ボートの下に沈んでいる中学生など誰も気づいてくれない。
友人はどうなったんだろう。
しばらくすると、ボートと人の間にわずかな空間が!
そこから顔をだそうとしたその時だった。
私の足首に何かが絡みついた
そのせいで、私はふたたびボートの下へと
引き戻されてしまった
完全にパニックになり、それを振り払おうと
足をバタバタ・・・その何かを蹴り上げたりした
女の子たちの声援がぼんやり遠くなって聞こえて、
もはやダメか・・・
と思った時、足首に絡みついていたものが
ふわ〜〜〜んと外れた
その瞬間、もう人のことなど構っていられない、
水着姿の女の子の間から、ガバッ!!と水面に出た。
「ブハッ!」
たぶんすごい形相だったと思う。
あと少しで死ぬとこだった・・・。
と・・・
急に”ともだち!!”
そうだ、彼女はどうしたんだろう・・・?
自分のことで精いっぱいだった・・・
え?どこ?
あの絡みついていたのは・・・!!!
もしかして
助けを求めていた彼女の手だったんだろうか!
そう思ったら怖くなって
ボートの下を覗き込んで彼女をさがした
いない・・・
泣きそうになって、ふと1〜2mほど向こうを見る
すると
ノリノリで手を挙げて声援を送っている友人が見えた!
♪情熱の嵐の曲は続いていた・・・
.
(補足:私の足に絡みついたのは
係留用ロープだったのではないかと思います)

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