八丁堀事件1
1984年(昭和59年)の12月に結婚した私は、
友人の紹介で翌年の4月から
東京八丁堀にある建築資材のリース会社に
勤めることになった。
立ち上げたばかりの小さな会社で、
社長、部長、そして事務員の私の3人でのスタートだった。

翌年の終わり頃にはバブル景気が到来、
建設ラッシュで
それはそれは、ものすごく忙しく、
すぐに営業マンや女性事務員も増やしたが、
それでも残業しないと間に合わないような忙しさだった。
会社に届くお中元やお歳暮なども多く、
事務所の出入り口近くに棚を作り、
頂いたものを並べ、
皆で分けて各自持って帰っていた。
しかし、ビールやコーヒーセットなどは、意外と重く、
満員電車で千葉まで持ち帰るのは、
なかなか勇気がいる。
だんだん皆が持ち帰り、
最後に私のものだけが残っていた。

その日は、一人で残業をしていて、
早く帰った夫から「迎えにいくよ」と連絡が入った。
「それなら、お中元の品を車に積んで持ち帰りたい!」
夫が到着し、「そこの棚にあるのを積んで欲しい」と頼んだ。
「これ全部?」
「そう、もう私のものしか残ってないから」
夫が車に運んでいる間、
私は仕事の片づけをして、軽く掃除。
そして帰路に着いた。
「こんなに貰って、いいのか?」
「だって、社長が皆で分けなさいというんだから・・・」
「へぇ、建築業界は景気がいいんだなぁ」
マンションに到着。
持ち帰ったお中元を運んでいて、
とんでもないことに気が付いた。
「え?こ、これ!!」
それは、社長が先日某会社の
『創立記念パーティー』に出席した際に頂いた
桐の箱におさまった高級ワイン2本セットだった。

(実際の写真ではありません)
「これは、持ってきちゃまずいやつだわ!!」
「え?だって全部積んでというから・・・」焦る夫。
いつも電車通勤の社長が、車で出勤した時に持って帰ろうと
「どこか別の所に置いてたと思ったけどなぁ。」
「あ!・・・そういえば・・・
これだけ少し離れたところにあった!!」と夫。
私に「全部積んで」と言われ素直に積んだまで。
確認しなかった私のせいだ。
社長に事情を話せば
「じゃぁ、あげるよ」と言うかもしれないが、
いやいや、なんかわざとやったみたいだしなぁ。
「近いうちにまた車で迎えに行くから、
その時持って行ったら?」と夫。
「そうだね、そうするわ」
そういう結論になった。
ところが!!
2へ続く
|
|