私たち夫婦は職場結婚。知り合ったのはちょうど20年前になる。 同じ会社内にその名も「金田一」という年配の女性がいた。彼女はあの国語辞典の金田一京助氏の「いとこ」。 ずっと独身をとおしてきた彼女は今から10年前、当時住んでいた川崎のアパートの立ち退きにあってしまった。
すでに千葉に越してきていた私たちは、会社でお世話になった彼女のために・・・と近所の住まいを探した。 なかなか一人ぐらしのお年寄りに部屋を貸してくれるところはない。 何とか知り合いの伝手で見つけて、彼女に話してみた。
年齢を重ねてからの引っ越しは気が重いものだ。 彼女は一度こちらへ遊びにきたときに見た夕陽が綺麗で忘れられなかったらしく、川崎から引っ越してきた。
あれから10年、先日何度目かのアパートの更新があり、保証人になっているHideちゃんとともに部屋を訪ねた。 こちらで友人も作って楽しく暮らしているようで、とてもうれしく思う。
今日彼女から電話がきた。「ねぇ、おとうふ届けてくれた?」「ううん、私じゃないよ」「そう、だれかな」
毎日自分のことで手一杯で彼女におとうふを届けるなんてこと・・・思いつかなかった私。 おとうふを見て私に電話をくれるなんて、何だかうれしいような、恥ずかしいような・・・だな。
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